フィットネススイートルームを備えた
世界初のリカバリーホテル「SIRO」が描く、ウェルネスの新潮流
フィットネス、栄養、睡眠、回復、マインドフルネスの5つの柱を軸に、ホテル業界に革新をもたらす「SIRO(サイロ)」。高級ホテル運営で知られるケルズナー・インターナショナルが手がける同ホテルのウェルネスは、従来のスパやウェルネスリゾートとは一線を画す、フィットネスとリカバリーに特化した新しいホテルコンセプトが貫かれている。2024年2月にドバイのワン・ザアビールにオープンした1号店を視察した。
(※SIROは、2029年六本木に、100室の現代的な客室とSIROの代表的なフィットネス&リカバリーラボを備えてオープンすることを予定している)
「SIRO」のコンセプトとは
「SIRO」という名称は、Strength(強さ)、Inclusivity(包括性)、Recovery(回復)、Originality(独創性)の頭文字から成り立っている。
ケルズナーのCEO、フィリップ・ズーバー氏は「フィットネス、リカバリー、セルフケアを優先することは、多くの人々にとって生き方そのものとなり、現代生活の基盤となっている」と述べる。SIROは、この社会的変化に対する同社の明確な回答として位置づけられている。
このコンセプトの背景には、単なるエクササイズの場を提供するのではなく、ゲストが心身のポテンシャルを最大限に引き出すことを可能にするという明確なビジョンがある。従来のホテルが「くつろぎ」や「逃避」を提供してきたのに対し、SIROは「パフォーマンスの向上」と「最適なリカバリー」を提供する。これは、現代のウェルネストレンドが、ヨガやグリーンジュースといった従来型のアプローチから、テクノロジーとバイオハッキングを融合させた最適化志向へとシフトしていることを反映している。
最先端の「フィットネスラボ」
SIROの中核をなすのが、約1,000平方メートルに及ぶ「フィットネスラボ」だ。これは単なるホテルのジムではなく、プライベートクラブのような空間として設計されている。
専用レセプションエリアがあり、栄養相談や体組成分析を行うスタッフが常駐し、スムージーやプロテインバー、新鮮なスナックを提供する「リフューエルバー」も併設されている。
施設はテクノジム社の最新機器で統一され、有酸素運動、筋力トレーニング、ファンクショナルトレーニングの各ゾーンに分かれている。特筆すべきは「エクスペリエンスボックス」と呼ばれる没入型スタジオで、ブラックアウト効果、アンビエントライティング、音楽を組み合わせた空間で、HIITからボクシング、ピラティスまで、週50以上のクラスが提供されている。
さらにSIROは、セリエAの強豪ACミランやオリンピックボクサーのラムラ・アリといったトップアスリートと協力し、彼らのトレーニングメソッドを取り入れた専門クラスも開発している。ゲストはチェックイン時に専門スタッフによる全身評価を受け、個々のニーズに合わせたパーソナライズされたプログラムが提供される。

科学に基づく「リカバリーラボ」
SIROの「リカバリーラボ」は、従来のスパの概念を超えた施設だ。もちろんハマムやサウナ、トリートメントルームも完備されているが、最大の特徴は、筋肉の回復とストレッチを促進するために設計された最先端のテクノロジーを活用した治療法にある。
具体的な施設としては、MRIのような赤外線デトックスドーム「MLX i3Dome」、タッチレスのバイブロアコースティックウォーターセラピーベッド、クライオセラピー(冷凍療法)チャンバー、ヒマラヤ岩塩ルームなどが用意されている。また、筋膜カッピング療法、電極による筋肉刺激、INDIBAによる高周波治療、理学療法、鍼治療なども提供され、まるで高級な理学療法セッションを受けているかのような体験ができる。
リカバリーフロアには、温かいラウンジャーとクッションが配置された低刺激の多感覚的な空間が広がり、ヒマラヤ岩塩の壁が柔らかく光る。ヨガやピラティスのスタジオ、ジャグジー、サウナなどの「ローテク」なウェルネス施設も完備され、ハイテクとローテクが絶妙にバランスした空間となっている。
また、注目すべきは脊椎を減圧するためのゼログラビティチェア(無重力椅子)だ。これは客室にも設置されており、激しいトレーニング後の体を休めるための重要な要素となっている。




科学的に最適化された客室と、フィットネススイートルーム
SIROの132室の客室は、すべてが回復と睡眠の最適化を念頭に置いて設計されている。睡眠専門家のアンナ・ウェストが設計に関わり、遮光カーテンや体内時計に合わせたサーカディアン・アラームクロックが標準装備されている。マットレスは温度調節機能付きで、シーツや掛け布団は通気性に優れた素材を使用。さらに、エアコンによる喉の乾燥を防ぐため、天井ファンも設置されている。
客室には、プロジェクタースクリーンが設置され、オンデマンドのワークアウト動画、ガイド付き瞑想、睡眠誘導ビデオが視聴可能だ。また、ミニバーには通常のソフトドリンクや砂糖入り飲料の代わりに、クリーンなプロテインシェイクや野菜・フルーツジュースが、スナックには高タンパク質バーやナッツ、水分補給スティックが用意されている。
さらに注目すべきは、6室の「フィットネススイート」と6室の「リカバリースイート」だ。フィットネススイートは、テクノジム製のウッドウェイ・トレッドミル、ボクシング用サンドバッグ、ダンベルラック、スピンバイクなどを完備した、事実上のプライベートジムとなっている。
一方、リカバリースイートには専用のトリートメントルームがあり、スポーツマッサージ、フェイシャル、さらにはアイスバスまで、いつでも利用可能だ。
客室のもう一つの特徴は、スウェーデン式ラダー(壁掛け式のトレーニングバー)やレジスタンスバンド、バランスボール、フォームローラーなどを収納した「アクティブリカバリークローゼット」だ。つまり、客室自体がミニマルなトレーニング空間としても機能するように設計されている。


プロジェクターで、オンデマンドワークアウトや睡眠誘導ビデオが視聴可能
ダンベル、スピンバイク、トレッドミル、キネシス、ベンチなどが揃う
スウェーデン式ラダー(肋木)と、無重力チェア
レジスタンスバンド、バランスボール、フォームローラー「アクティブリカバリークローゼット」
リカバリースイートルーム
コミュニティとマインドフルネス
SIROのもう一つの重要な側面が、コミュニティの形成だ。
「ザ・コレクティブ」と呼ばれる専用ワークショップエリアでは、週3回、睡眠、栄養、腸の健康、マインドフルネスといったテーマのセッションが開催される。これは単なるホテル滞在ではなく、ウェルネスコミュニティへの参加を意味している。
実際、ロビーはトレンディなコワーキングスペースのような雰囲気で、モジュラーソファや長いテーブルが配置され、ラップトップで作業をしたり、ワークアウト後にプロテインシェイクで活力を取り戻したりできるようになっている。最近では、プーマがホストする「モーニングラップ&ヤップ」(周辺公園での3キロラン後、ブランドアンバサダーによるパネルディスカッションと朝食)といったイベントも開催されており、フィットネスコミュニティの形成が進んでいる。
また、「ゼンルーム」と呼ばれる空間も用意されており、スイッチを切り、読書、ジャーナリング、あるいは単に睡眠をとるための場所として活用できる。
デスティネーション・フィットネス
SIROは屋内施設だけでなく、周辺環境も活用したプログラムを提供している。
SIROが付帯するOne Za’abeel(ワン・ザアビール)には、「ロンジェビティハブ」があり、最先端の測定機器で、代謝、リカバリーレベル、免疫力、肌の健康度、老廃物排出能力などが測定できる。「Longevity(長寿/ヘルススパン延伸)」「Wellbeing(健康・活力)」「Aesthetics(美容・若返り)」の 3 本柱でソリューションが提供できる環境が整えられている。
またドバイでは、砂漠でのバイクライド、山岳トレッキング、デューンバギー、フットボール、ゴルフセッションなどの高強度のオフサイトアクティビティが用意されている。
モンテネグロのボカプレイスでは、沿岸部と山岳地帯という立地を活かし、ガイド付きネイチャーウォーク、キャニオニング、ウェイクサーフィンなど、自然をトレーニングの場として活用するキュレートされた屋外体験を提供している。これは「デスティネーション・フィットネス」というコンセプトで、休暇中に単にリラックスするのではなく、フィットネスレベルを向上させたいと考える旅行者をターゲットにしている。
最先端のテクノロジーとトップアスリートの知見を融合させ、単なる宿泊施設ではなく、ウェルネスコミュニティとしての役割を果たすSIRO。その急速な展開計画は、フィットネスとリカバリーに特化したこの新しいホスピタリティモデルが、今後のウェルネス業界において重要な位置を占めていくことを示唆している。


「Longevity(長寿/ヘルススパン延伸)」「Wellbeing(健康・活力)」「Aesthetics(美容・若返り)」の 3 本柱で、測定&ソリューションが提供できる環境が備えられている
DATA:
名称:SIRO
所在地:
立地:Ithra Dubai(Dubai Investment Corporation 傘下)が開発した One Za’abeel(ワン・ザアビール) は、ドバイ国際金融センター(DIFC)の玄関口に位置する大型複合開発プロジェクトの一角。
開業:2024年2月
客室数:132室
付帯施設:885㎡のフィットネスラボ(ジム)、840㎡のリカバリーラボ(スパ)、One&Only ホテル内に設置された Clinique La Prairie ロンジェビティ―ハブ
料金
客室料金:1泊 AED1,460(US$398)〜
(ホテル宿泊客は、全施設および各種クラスを無料で利用可能)
フィットネスラボ年間会員(シルバー:施設利用のみ):AED7,095(US$1,932)
フィットネスラボ年間会員(ゴールド:クラス無制限):AED9,460(US$2,576)
スパ基本メニュー(60分マッサージ):AED400(US$109)〜